PDアウトライアーズ(桁外れのパーキンソン病患者さん達)は傑出したパーキンソン病患者さん。が病気と上手く付き合っていく方法を語り、皆さんと共有するためのインタビュー・シリーズです。
(川合寛道:翻訳、医学監修、Ms. Mariko Shawback: 校正、共同翻訳)
岡田芳子さんは医師であり、第2回の日本パーキンソン病学会(JPC)の会長でもあります。彼女は40年のパーキンソン病罹患歴を持っています。私は東京で数週間前にPD Movement Labのテクニックについて講演した時に、芳子さんに会って、彼女のコンディションに驚きました。齢67歳にして、彼女は東京の通りをノルディックポールを使って歩き、週3回皮膚科医として勤め、新幹線で2時間半かかる東京郊外から毎週通勤しているのです。彼女はまた妹や夫と共に、年に1、2回海外旅行にも行きますし、片田舎の温泉でリフレッシュしてストレスを解消したりすることも大好きです。
彼女のとても長いパーキンソン病歴に興味を引かれながら、私は彼女の傍に座り、彼女の治療方法と人並みはずれた成功について聞いてみました。私達の会話は彼女が治療法をいかに最適化し、彼女のエネルギーをどこから得ているかに触れ、27歳でパーキンソン病と診断された時の思いも伺いました。
Pamela Quinn(以下PQ):あなたは40年以上パーキンソン病をお持ちですが、今でも活動的で自立した生活を送っておられます。長持ちの秘訣は何だと思われますか?
岡田芳子(以下YO):私は働くことが好きなんです。
PQ: どういう風に?
YO: 私は患者さん達とお話するのが好きなんです。話をすることによってこの世界とつながっていられますし、私の人生に色々な意味を見出すことも出来ます。
私は脳神経内科医ではないのですが、私の医師としての仕事は病気を管理する上で役にたっています。医学部でのトレーニングによって人体に関して深い理解をしたことに感謝すべきでしょう。これは私の治療法をとても正確なやり方で私にあった方法に調節することを可能としました。一例を挙げると、私は食事と薬剤の相互作用をよく理解しており、どの食事と薬の用量をどのように組み合わせたときに最も調子が良いかわかりますし、その投与方法に従います。
私は主治医よりも薬剤に対して私の体がどう反応するかより良く理解していると信じています。私は毎日この病と共に暮らしています。そして医師としてその経験に実用的で敏感な方法で反応できる知識を持っているのです。
PQ: 心や記憶力を保つために何か特別にされていることはありますか?
YO: 私はゲームをするのが好きで、マージャンや数独をしますし、カラオケを歌うのも楽しいですね。料理や旅行も好きです。ゲームは私の心を鋭敏にしてくれますし、カラオケを歌う時には私自身を表現することを楽しみ、料理をする時には創造性を発揮しています。旅行は刺激とリラックスの両方ですね。
PQ: 何故パーキンソン病になったのだと思いますか?
YO: 私は遺伝的な素因を持っています。私の病気はAJRP(常染色体劣性遺伝若年性パーキンソン病)*という日本に多いタイプのパーキンソン病です。私の妹もARJPです。
日本は島国ですから、例えばアメリカと比べて近親婚が多いのです。そのことによって日本人の遺伝子はパーキンソン病のような遺伝性疾患を発症しやすくなっています。
しかし私は一方でパーキンソン病になったのは何らかの形で私が神様に選ばれたのではないか、という考えを捨てることは出来ません。私の医師としての経験とスキルは医学界と患者の間にユニークな繋がりをもたらすことが出来ます。私はそこに意義を見出します。
訳者注:AJRP(autosomal recessive juvenile parkinsonism, 常染色体劣性遺伝若年性パーキンソン病)は日本で発見された遺伝性(家族性)のパーキンソン病の一種で、Parkin等の遺伝子の異常によって発症することが知られています。一つ気をつけて頂きたいのはこのインタビューシリーズに登場する多くの人達がこのような家族性のパーキンソン病をお持ちであることです。一般的にいって家族性パーキンソン病の方は30-40歳代の若年で発症されることが多く、かつその症状の進行は通常の(孤発性)パーキンソン病よりかなりゆっくりであることが知られています。
PQ: 第2回の日本パーキンソン学会を主催されたばかりですが、演者を集い、トピックスを決定し、お金を集めて、開催場所を決め、広報を行う。とても大変だったと思います。あなたのその活力はどこから生じるのでしょうか?
YO: 働けば働くほどエネルギーが沸いてくるのです。仕事が私の活力源なのです。友達も私を助けてくれますしね。パーキンソン病のコミュニティを前進させるために私たちに何が出来るかを考えるとワクワクします。
PQ: あなたが感謝したり、あなたの人生に良い影響を与えたと思うパーキンソン病の側面はありますか?
YO: その質問に答えるのは難しいですね。何故なら私の人生の大部分はこの病気と共にあったので、この病気のない私の人生と比べてみることが出来ないからです。この病気のない人生を想像することは出来ません。この病気を通じて沢山の友達が出来ましたし、それ以外では知り合うことの無かった人たちと知り合うことも出来ました。
私はパーキンソン病患者であると共に医師でもあるという私の役割について色々と考えてみました。私は医学的な側面からも、自分自身の経験的な側面からもアプローチすることが出来ます。私は二つの世界に同時に存在でき、その間のギャップを埋めることが出来ると考えています。
私は、他のパーキンソン病患者さんを助けることの出来る能力は神様の贈り物だと思っています。
PQ: 新たにパーキンソンと診断された患者さんにアドバイスするとすれば?
YO: あなたは自分自身の主治医にならなければなりません。あなたは毎日その病気と共に生きなければならないのです。あなたはどの治療が効果があり、どの治療がそうでないか、他の誰よりも理解する必要があります。医師は連続した症状のある瞬間しか見ていないのです。勿論医師は必要ですし、とても重要です。しかし、あなたはあなた自身の体が薬物や食物、ライフスタイルによってどのように影響されるかを細かく知っておく必要があります。そしてそれらの事全てに関してあなたの主治医と意見を交換する必要があります。あなたのパーキンソン病を治療するということはあなたと主治医の共同作業なのです。
PQ: もし、もう一度パーキンソン病になった頃に戻ったら何か違うことをしますか?
YO: いえ、今までしてきたことと同じ事をするでしょう。
PQ: それぞれの国ではある量の資源が医療に投入され、またある量の資源が研究に投入されます。これは日本ではどのように分配されているのでしょうか?この分配比率に同意しますか?
YO: 日本では高齢化社会が始まっています。パーキンソン病患者さんの数もそれに伴い増加しているため、より医療に資源を投入すべきだと思います。我々は避けがたいパーキンソン病患者さんの増加に対して新しいPDサポートネットワークを作る必要があります。これはよりよい医師-看護士-患者関係を意味します。そしてまたそれは患者さん同士がよりよくつながることも意味しています。
私が気に入っているアイデアの一つはパーキンソン病患者さんが他のパーキンソン病患者さんを介護するネットワークです。On状態にある患者さんが Off状態の患者さんを助けるのです。パーキンソン患者さん同士は理解しあう事が出来ます。他の患者さんが何を求めているか分かっていますし、この病気の特異的な症状も上手く扱うことが出来るでしょう。病院に勤務している人たちはパーキンソン病患者がある時、あることが出来ても、その次に同じ事が出来るとは限らないことを知らない場合があります。
勿論病院勤務者のトレーニングも増やさなければいけませんが、患者さん同士のケアがより遠い所まで行けるのでは無いでしょうか?
PQ: 素晴らしいですね。一人の力でここまで出来るとは。あなたのお考えを共有していただいて大変有難うございました。
YO: どういたしまして。
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