Gary Pauley氏 筋力の最大化とDBSの調節、ウエイトリフティングコーチ、そして退役軍人ゲーリー・ポーレイ氏

PDアウトライアーズ(桁外れのパーキンソン病患者さん達)は傑出したパーキンソン病患者さん。が病気と上手く付き合っていく方法を語り、皆さんと共有するためのインタビュー・シリーズです。

(川合寛道:翻訳、医学監修、Ms. Mariko Shawback: 校正、共同翻訳)

 

ゲーリー・ポーレイ。彼はサウスダコタの農場で育ち、2002年に帰還するまで、アメリカ軍の軍警察官として20年に渡る経歴の間、世界中を巡っていました。7年後、46歳の時に彼はパーキンソン病と診断されました。彼の病状は非常に早く進んだので、彼の主治医はDeep Brain Stimulation (DBS) 脳深部刺激療法といわれる方法を勧めました。これは脳の中の特異的なターゲットに電気的信号を送るために神経刺激装置と呼ばれるデバイスを埋め込む方法です。DBSは彼の様々な症状を大幅に改善しました。しかしゲイリーのバランスはその後また悪くなり、2015年には立って自分自身で着替えをすることさえ難しくなってきたのです。

ちょうどその頃、彼はGEM (Get excited and Move! テンションを上げて動こう!) と呼ばれるパーキンソン病患者支援グループのために開発された筋力トレーニングのプログラムをジョージア州のサバンナ郡で始めたのです。サバンナはゲイリーと彼の家族が帰国後に落ち着いた場所でした。ゲイリーはプログラムの中に含まれている運動が、彼のバランスを取り戻したり、全般的機能を改善したりするのに非常に有効なことを発見しました。それがとても有効だったので、彼はウエイトリフティングの競技に出場すること、そして彼自身がウエイトリフティングやGEMの認定コーチとなることを決めました。彼は今、他のパーキンソン患者さんのための教室をサバンナで複数持っています。また教室の患者さんたちを勇気づけるように、ゲーリー自身も2016年のジョージア州50代以上クラスの合衆国ウエイトリフティング大会で優勝しています。

私はゲーリーと話をして、どのようにして彼がこのような印象的なレベルにまで彼のバランスと筋力を引き上げたのか、そして彼が他の患者さんのフィットネスレベルの改善を助ける過程でどのような洞察を得たのか尋ねてみました。

この話の後半ではDBSに関する彼の経験と、他の退役軍人のパーキンソン病患者さんを助けるという彼の使命についても聞いてみました。

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Pam:それではまずウエイトリフティングの事から始めましょうか?どのようにしてリフティングを始められたのでしょう?

Gary: ウエイトリフティングを始めたのは全くの偶然だったのです。

2015年の初めごろ、私のバランスは次第に悪くなり、走ってもタイムを縮めるどころかただ完走するのが精一杯で競技として走ることは止めてしまいました。その年の初めの数ヶ月で私は初めて転倒してしまい、ドクターは私がトレッドミルに乗るのを禁止しました。私はだんだん活動的ではなくなり、社会的、身体的、心理的問題が結果として山積していきました。

そうしたことが起こっているときに、ジョージア州サバンナのパーキンソン病支援グループの委員会(私もその委員だったのですが)がパーキンソン病患者さんのための運動プログラムを立ち上げたのです。私たちは、ウエイトリフティングのオリンピック選手であり、コーチとしても2度オリンピックに出場したマイケル・コーエンにこの計画に参加してくれるようお願いしたのです。そして、その計画の一部としてウエイトリフティングに関わるようになったのは自然の成り行きでした。私がバランスの問題でコーエンに相談した時に彼はオリンピック式のウエイトリフティングを教えてくれたのです。

Pam: オリンピック式のウエイトリフティング?

Gary: オリンピックのウエイトリフティングには2種類しかありません、スナッチとクリーン&ジャーク(以下ジャーク)です。多分両方ともテレビでみられたことがあるかと思います。スナッチは床の上に置いてあるウエイトのバーを間隔を広くあけて握り、まっすぐ持ち上げるのですが、その際にあなたの頭がバーの下にくるようにします。あなたはバーの下にしゃがみこむ事になって、ウエイトを頭上に持ち上げ、それから立ち上がるのです。

ユーチューブのスナッチの動画(ゲイリーではありません。)

ジャークもよく似ているのですがスナッチの時ほどグリップの幅が広くはありません。ウエイトを持ち上げた後で、一旦鎖骨の上で保持して、それから頭上に挙げるのです。

ユーチューブのジャーク&クリーンの動画(ゲイリーではありません。)

Pam: ウエイトリフティングを始めてから効果が実感できるまで、どのくらいかかりましたか?

Gary: すごく良くなったと感じるまでには6ヶ月から8ヶ月程度かかりました。その頃転倒する心配が少なくなったので、また立って着替えができる様になりました。私は手すり付きのストールから普通の椅子にまた座れるようになりました。自分の体重をより簡単に持ち上げられるようになり、みんなの前でできる自信もつきました。私の主治医もいくつか診察をして私の歩行状態が改善しているといってくれました。

Pam: 基本的に静的な運動をすることによって歩き方が改善したのは不思議ですね。最初こんなことが起こるとは思われなかったのではないでしょうか。リフティングがあなたのからだのバランスや可動性にこのような好影響を与えたのは何故だと思いますか?

Gary: スナッチやジャークはあなたの体に影響を与えるようにあなたの脳にも影響を与えます。例えばスナッチを例にとってみましょう。あなたは、重心が常に足の上にあるように集中しなければいけません、―何故なら重いウエイトを頭上に挙げなければならないからです。それはまるであなたの脳みそを切り裂く様に感じられます。極度の集中と、体のいくつかの部位を協調して動かすことによりあなたの脳の中でシナプスが再形成され再発火するようになるのかもしれません。これはあくまで私の想像ですが。

我々パーキンソン病患者は次第に一次元的になっていきます。いくつかの課題を同時にこなす能力を失っていくのです。いくつかの課題を同時にこなさなければならない運動をすることによって、病気の進行を押し返すことが出来るのではないかと考えています。もっとも私は脳科学者ではありませんが。

Pam: 最も重いウエイトを挙げられるようになるのにどのくらいかかりましたか?

Gary: 1年以内にスナッチでは77パウンド(約35kg)から123パウンド(約55.8kg)まで挙げられるようになり、ジャークでは104パウンド(約47kg)から159パウンド(約72kg)まで挙げられるようになりました。どちらの記録も私がジョージア州の50代以上の男性のウエイトリフティング競技会に出場した時のものです。私はジョージア州の50歳から55歳の体重115kg以上のクラスで優勝しました。

Pam: それは素晴らしい!

Gary: しかしその時肩を痛めてしまったので、私はしばらく休息をとらなければいけませんでした。しかし私の筋力はなお強くなり続けており、また競技会に出たいと考えています。最近スナッチでは134パウンド(約60.8kg)をジャークでは171パウンド(約77.6kg)を挙げました。

Pam: ウエイトリフティングをやったことが無い人に何かアドバイスはありますか?重量挙げの技能を身につけるのに最も良いアプローチは何でしょう?

Gary: トレーナーをつけることですね。それには費用がかかることは分かっています。しかし物事をこのような面からみてほしいといつも周りの人に話しています。私は農場で育ったのですが、そこでの問題はいつもお金が足りないことでした。誰かの助けが必要になった時、私の父はいつも祖父に「人を雇う必要はありますか?自分たちだけで出来るんじゃないですか」と言っていました。すると祖父はいつも「良い使用人はお金がかからない。彼らはお金を稼いでくれる」と答えていました。 

良いトレーナーはあなたが払うお金の5倍も価値があります。彼らの持っている専門的技能や知識によって運動が正しく出来ているかを保障し、怪我をしないようにしてくれます。ご高齢の方が運動を止めてしまう最も多い理由は怪我なのです。トレーナーはあなたが怪我をするリスクを最小にしてくれます。

Pam: それは素晴らしい例えですね。では初心者の段階を超えて、あるレベルで進歩が止まってしまった時、更に筋力を強くするためにはどうすれば良いでしょう?

Gary: 誰でも壁にぶつかるものです。50歳を過ぎると(私達のほとんどがそうですが)進歩が止まってしまった時、それを乗り越えるのは極めて難しくなります。私はほんの少しだけの変化が大きな違いを生むと考えています。私が挙げることの出来るウエイトの重量が最も増えたのは手の位置を変えた時でした。(先ほどお話ししたように、トレーナーはあなたに合わせてこのような小さな変更を行う事が出来ます。)私の筋力はワークアウトの時間を朝から昼へと変更した時にも増加しました。そして私の薬を運動のスケジュールに合わせてどう調整したら良いかが分かった時にもね。

Pam: 実際にはどうするんですか?

Gary: 私は朝のプロテインを摂る半時間前か、もしくは1時間後に薬を服用します。従って私は朝起きて6時半に薬をのみ、7時から7時半の間に朝食を摂ります。そして私のGEMクラスが始まる直前の10時にもう1回薬を服用します。私は週に4回GEMクラスに参加しています。

Pam: なるほど。ではこのあたりでウエイトリフティング以外のより広範囲なGEMの内容に関してお聞きしようかと思います。

私の考えではGEMは筋力、柔軟性、バランスを改善させる運動を組み合わせる事が特徴ではないかと思いますが。いかがでしょうか?

Gary: そうですね。GEMは非常に多面的です。マイケルがプログラムを計画した時に最近のパーキンソン病の運動療法に関する研究を全てみて、パーキンソン病の患者さんが典型的に持っているトラブルを標的としたプログラムを作ったのです。俊敏性やバランスに梯子ドリル(床の上に広げたロープの梯子をステップしていく)、筋力アップと全身の協調運動としてはウエイトリフティング、その他にもボクシングなどたくさんの運動をお勧めしています。これはとても豊かで包括的なプログラムです。

Pam: どの運動が最もその人の助けになるかを考える上で、あなたはコーチとして非常にユニークな立場にあると思います。このブログを読んでいる人達の中には既に定期的に運動されている方もいらっしゃるでしょう。GEMのプログラムの中から、これは特に効果が高いというエクササイズはあるでしょうか?

Gary: 誰かが新しくGEMに参加してきたとき、その方のどこが弱いのかを私たちは観察します。そしてその弱点を補正できるようにGEMのルーティンを調整します。私のここでの提言もこの線に沿ったものです。

  • もしあなたがバランスの問題を抱えているとしたら、スナッチとジャークが私には最も役立ちました。もしこれらが複雑すぎると感じたり、教えてくれるコーチがいないなら自重を利用したスクワットも極めて有効です。

  • もしあなたが筋強剛や痛みの問題を抱えているのなら、ストレッチ、特に股関節や足関節、膝関節の回旋運動をお勧めします。私がGEMを始めた時、しばらく動いていなかったので昔軍隊にいた時の股関節の古傷がまた痛み始めたのではないかと思っていました。しかしストレッチをすることによってこの痛みを和らげることが出来ました。ストレッチはフィットネスの中でもとても簡単に見過ごされてしまいがちな要素ですが、私には最も大きなインパクトがありました。

  • そしてもしフラストレーションがたまっているならボクシングです!

Pam: ボクシングをそんな風に取り入れるのは聞いたことがありません・・。

Gary: ええ、もちろんボクシングは厳密に言えば、筋力と敏捷性を向上させるのに役立つのですが、それが感情に与える好影響はひどく過小評価されているように思います。GEMをしている人達が最も好きな活動はボクシングだと思いますよ。70代や80代の女性がやってきた時に「ボクシングのグラブをつけて下さい、サンドバッグを打ちますよ」というと、彼女たちは最初「何のためにこんなことをするのかしら?」といいます。でも彼女達に何かイライラすることがありますか、と聞くと、少し考えたのち彼女達の中で何かが変わります。そしてサンドバッグの所へやってきて、それをボコボコにぶちのめすのです。

Pam: (笑)

あなたはひょっとしてRock Steady Boxingに詳しい?

Gary: それは面白いですね。実は我々が2015年に地域の運動プログラムを探していた時、見つけたのもRock Steady Boxing*でした。ただ残念な事に、非常に値段が高く、我々の地区の誰もが払える金額ではありませんでした。数ヶ月後マイケルが(ボクシングと一連の他の運動を含めた)GEMのプログラムを提案してくれた時、我々のサポートグループは献身的なサバンナ郡の郡政委員に働きかけてその値段を下げてもらうことに成功しました。その郡政委員の方達のおかげで、現在我々は回数無制限のGEM教室を月にたった10ドルで提供する事が出来ています。身体的、社会的、経済的に様々な環境の人が我々の教室に来られます。運動プログラムを作ろうとしているどんなコミュニティにおいても、その過程の一つとして地区の行政に関わってもらうことをお勧めします。

[訳者注:Rock Steady Boxing は2006年にインディアナポリスで設立された、ボクシングの動きを取り入れたパーキンソン病患者さんのための治療プログラムです。現在日本では神戸のRock Steady Boxing WTS Japanの坂井さん、津野さんが日本でこのプログラムを広めていらっしゃいます。]

Pam: それを達成されたのは素晴らしいですね。さてここで話をDBSの方に大きく転換しましょう。何故ならあなたはご自身の成功において、DBSが欠くべからざる要素だと考えていらっしゃるからです。DBSは誰にでも適応がある訳ではないですし、時に重篤な合併症を引き起こすこともありますからね。しかしDBSが生み出すメリットについて聞くことは重要だと思います。何故DBSを受けようと思ったのですか?

Gary: 最初私がパーキンソン病と診断された時、直ちにシネメットとアジレクトの処方が始まりました。初日、私は4錠のシネメットを服用しました。しかし10か月後には注意すべき症状の進行がありました。シネメット(levodopa-carbidopa)の量は2倍になっていたのです。DBSは薬の量を減らす一つの方法です。もちろんそれに加えて振戦や筋強剛を改善する効果もあるのですが。

Pam: そしてあなたが手術を受けたのは?

Gary: 診断を受けた11ヵ月後です。

Pam: 11ヶ月?それは信じられないくらい早くありませんか?

Gary: 当時私もそう思いました。通常はDBSの手術を受ける前に最低でも4年程度の病歴がなくてはならないんです。実は私も主治医に、本で読んだ条件に私はあてはまらないと言いました。私の主治医は脳外科医が私をテストケースにしたいのだという話をしてくれました。私のように若く活動的な人間に早期にDBSを行えばより長い期間QOLを保てる、ということを彼らが保険会社に証明できれば、診断されてからより早期の患者さんに対しても手術への門戸を開く事が出来るという事でした。

支援グループを何度か訪ね、親しい友人や家族と話をしたのち、私はDBSを受けることにしました。


Pam: 効果はすぐにありましたか?

Gary: デバイスをオンにするまで30日間待たなければいけませんでしたが、オンになると直ちに筋強剛に効果がありました。毎朝起きる時に高校時代の地獄のフットボールキャンプ週間を終えた後のような倦怠感をもはや感じなくなりました。それが私の覚えている一番大きな身体的変化でした。

予想されたように私の薬の量は、一日に2錠を4回(8錠/日)から、1日に1錠を3回(3錠/日)に減り、振戦も減ったので、簡単にシャツのボタンをかけたり靴紐を結んだり出来るようになりました。これらは確かにはっきりとわかる具体的な改善でしたが、私がDBSから得た最も大きな利益は私の態度の変化だったと他の患者さんには話しています。

Pam: どういう意味ですか?

Gary: これを言うとドラマティック過ぎるように聞こえて嫌なのですが、そういった小さな細々したことが出来るんだと気がついた時、私はその体験を味わい、喜びをかみしめていたんです。今日は靴の紐を結ぶことが出来た!シャツのボタンを留めることが出来た!手術は目覚まし時計のベルのようでした。私は幸いにもこのような動作をする能力を取り戻したのです。こういったことができる日々を精一杯有意義に過ごさないといけないと感じ、まだ残っている他の能力を保持するために出来る全ての事をしようと思いました。

もう一つ私に起こったことは自分のパーキンソン病を隠せなくなったことです。写真を見ればお分かりの通り、私の髪の毛は結構寂しい方なんですが、手術の数ヶ月後、私の前頭部には32針も縫う大きな傷跡が残りました。こうなると誰の目にも何が起こったか明らかになり、もう誰かに何度も何度も同じことを説明する必要はなくなりました。

これで私は大きな重荷を肩から降ろした気分になりました。今持っている身体機能を喜びを持って味わうという新たに見出した能力と合わせ、私は感謝し決然と熱い気持ちを持って前へ進む事を決意したのです。

Pam: あなたの生活はどう変わりましたか?

Gary: 手術の後、私がドクターにまず言ったのは、今までやったことのない運動をやりたい、という事でした。軍隊ではよく走っていたし、いつもマラソンを走ってみたいと思っていました。それで私は地元のクロスカントリーチームのコーチに助言をもらいました。彼はハーフマラソンを勧めてくれました。

月曜から金曜まで毎日4-6マイル走れて、週末に距離を伸ばせればハーフを走れると彼は言ってくれました。もし練習の時10マイルを完走出来れば、レースの時のアドレナリンが最初と最後の1.5マイルを走らせてくれる、と。

私はマラソン前の土曜日に10マイル半走り、手術後90日でハーフマラソンを初めて完走しました。今はもう走っていませんが、私ができることに感謝していますし、それを維持していこうという強い気持ちを持っています。DBSに感謝します。

Pam: それではDBSを受けた人がデバイスから最大限の効果を得ているかどうか確認出来るようにプログラミング期間についてもお聞きしましょう。ドクターが電圧を調整する必要があるとどうやって分かるのでしょう?

Gary: それについては日記を頻繁に書いています。私の「すぐ忘れちゃう病」はとてもひどいものですから、急激な症状の悪化を経験した時や、近くにいる誰かが何かに気が付いた時に、日記の置いてある机の所へ行ってそれを書くのです。プログラム期間の最初の頃、警告なしに振戦が再燃した時のことを主に記録しています。それは私のプログラミングが少しオフになっている兆候なのです。ドクターの所へ行って、そのエピソードの頻度と進行度合いを確かめ、それに従って電圧を調整します。

面白くなってきたのは、ドクターがプログラミングを私自身にもう少しコントロールさせてくれるようになってからです。

Pam: どうなりました?

Gary: プログラムから1年半後、私はより知識のある患者になり、自分の体について、それがどのように反応するかについて、もっと深く学び始めました。最初は一度に2/10ボルトだけしか調節させてもらえませんでした。 2/10ボルトだけ上げたり下げたりするのです。現在は1ボルトまで増減させてもらえるようになりました。

Pam: では、あなたは日によって電圧を上げたり下げたりするのですか?

Gary: ええ、その通りです。

Pam: 体の動きにどのような違いが生じますか?

Gary: 非常に過酷な運動をした時には、世界が変わります。私がこれまで一番大きな電圧の増加を試したのは6/10ボルトで、それはマラソンを走った後のことでした。その後何日かかけて私はまた少しずつ電圧を下げていきました。3日後には元の状態に戻したのです。

Pam: それは大きな電圧変化の例ですね。では日常生活においてもっと細かく電圧を変えるのは例えばどんな時でしょう?

Gary: 私は2年前、家の外の納屋に別室を作ろうとしました。梯子に登っていると、時にアドレナリンが放出されてバランスに影響を与えることに気が付きました。

その時私は電圧を2/10ボルト下げる事によってバランスを回復出来ました。おかしかったのは、電圧を下げた時、体のバランスは良くなったのですが、金槌を振ろうと思ったらまるでうまくいかなかったことです。梯子のてっぺんまで登っていっても1本も釘を打てなかったのですから。

Pam: それはパズルを解くようなものですね。

Gary: ええ。結局、まず必要な用具をまとめて、電圧を下げ、梯子を登って、屋根の上で一息ついてから、電圧を上げて金槌を使わないといけないことがわかりました。ある日私が屋根の上に登っている時、隣人にお願いして屋根の上に立っている写真を撮ってもらいました。私は担当の脳神経内科医に、こんな添え書きを書いてその写真を送りました。「主治医にやってはいけないと言われていることをする事以上に気持ちの良いことはない」ってね。

Gary & Pam: (笑)

ゲイリーが彼の主治医の脳神経内科医に「 主治医にやってはいけないと言われていることをする事以上に気持ちの良いことはない 。」 と書いて送った写真。

ゲイリーが彼の主治医の脳神経内科医に「 主治医にやってはいけないと言われていることをする事以上に気持ちの良いことはない 。」 と書いて送った写真。

そして私は担当医からこってり絞られましたよ。幸い、そんなやりとりができるくらい私たちの関係は良いのです。

Pam: それは何か特別な理由によるのでしょうか?

Gary: 私が主治医を変える時はいつでも、私のヘルスケアチームの一員になってもらえるかどうかインタビューします。そして私のものの考え方と、彼らのものの考え方が合わなければ、私のヘルスケアチームの一員にはなれません。そしてあなた自身も非常に知識のある患者のようにお見受けします。もしあなたが気のあったドクターを見つけて彼らと上手くやっていけるなら、あなたは病気と付き合っていく上で最大の助けを手に入れた事になるでしょう。

Pam: ええ、私もそれに同意します。私は主治医の意見なしに私の健康に関するいかなる決断もしませんし、私の意見なしに下した彼女の決断を受け入れることもしません。私たちは同じアプローチでのぞんでいるようです。

さて、そろそろこのインタビューも終わりですが、その前にもう一つ聞いておきたい事があります。それは退役軍人についてです。退役軍人の福祉と、パーキンソン病コミュニティによる支援の拡充があなたの個人的なゴールだと思います。どのようにしてそのゴールを達成するのでしょう?あなたのお考えは?

Gary: まず私が一番最初にしたいのは、このインタビューを読んでくれる全ての退役軍人に私に連絡をとってほしいとお願いすることです。退役軍人には同じ退役軍人の仲間にしか話せないことがたくさんあります。我々は深いレベルで理解し合うことが出来るし、それはパーキンソン病のような病に向き合うためには非常に有効なんです。

二つ目に、これを読んでくれている退役軍人たちに言いたいのは、あなた方が軍隊で受けたトレーニングはこの病気と向き合うのに最適な道具を与えてくれているということです。不屈の精神のことだけを言っているのではありません。軍隊で得たあなた自身の生活を厳しく律する能力と規律にしたがって行動する自制心が、大いにあなたを助けてくれるでしょう。

私は毎朝起同じことをするんです。起きたら風呂場へ足を引きずって行き、薬を並べます。1錠目のアジレクト、最初のシネメットのセットを、そうして犬の傍にいられるようにアレルギーの薬を服用します。それからシャワーをひねって暖かくなるまで待ちます。一般的に言って、朝のシャワーを終えて、一連の朝の行事を済ました頃に薬が効き始めます。そうすると一日がスムースにかつ前向きに始まります。私が服薬のスケジュールをどのように立てているのかは既にお話しましたが、それが私の運動や食事の予定を完璧なものにしてくれるのです。

私はこのような日常生活の厳しい規律が私の成功に大きな役割を果たしていると思います。もちろん、軍隊の経験の無い人でも同じように生活を律することは出来るでしょう。しかし私の場合は軍隊での習慣が役にたったのです。

Pam: お時間をありがとうございました。

Gary: こちらこそありがとうございました。



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